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 序 文

 「宇宙」という言葉を使うと急に胡散臭くなったり、オカルトチックになったりしてしまうので、今までは使うのを極力避けてきたが、もはや俺の意識はただ一点、「宇宙の外」に向かっている。

 宇宙の外には二人いる。それは幼少期から感じていた。二人は全く同じのようで実は少しズレていて、一人はもう一人よりときには少し、ときには遥かに大きく広がっていて、輪郭はありがちな感じでぼやけているわけでは決してなく、何よりもくっきりしているのだが線ではなく点線でできているといった感じなのだ。

 そして、一人はいつもただじっとこっちを見ているのだが、もう一人のほうはどこを見ているのかよくわからない。どこを見ているのかわからないのだけれどもやっぱり常にこっちをじっと見ているといった感じでそこにいるのだ。そう、そのもう一人のほうが不気味で、おそらくより重要なのだろう。

 俺は、いよいよそいつらをつかまえにいく。多分、俺はほんのはじまりしかできないだろう。けれど必ず次の真の芸術家がそのうち現れて俺の続きをやってくれるだろう。閉塞を続ける芸術の新たな扉を開くには「外」を捉えるしかないのだ。

 宇宙の外にいるそいつらを・・・・

 髪の毛一本でも・・・・

 俺はもう、そいつらを無視してはただの一歩も進むことはできない。

  2024年5月7日

  八反田 友則

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